動作中ソフトウェアの一部分変更機構の研究開発
【目的】
今日、計算機サービスのほとんどはソフトウェアにより実現されている。一方、
計算機利用形態の多様化により、サービス機能の追加や変更および削除が次々に
必要になっている。例えば、ソフトウェアの不具合の改修、新サービス機能の追
加、小型計算機向けの機能縮小、である。現在、これらの処理を行うには、サー
ビス提供中の計算機を停止させてソフトウェアを変更する必要がある。しかし、
共同利用の計算機の場合、その停止は影響が大きい。また、個人利用の計算機で
も、ソフトウェアのインストール中に他サービスを利用できないのは、不便であ
る。そこで、動作中のソフトウェアを変更できれば、計算機の利便性が向上する。
さらに、サービスを提供するソフトウェアの一部分のみを変更できれば、変更に
伴う処理時間を僅かなものにできる。
本研究では、計算機のサービスを止めることなく、プログラムの実行中に、そ
のプログラムの一部分を入れ替える方法を確立する。本方法の特徴は、従来の問
題点を解消し、サービスプログラムが入れ替えの契機を意識する必要がないこと、
および入れ替えられるプログラムの部分が入れ替えない別プログラムを呼び出し
ている場合も考慮していること、である。
【現在までの研究状況】
プロセスとして走行しているプログラムの一部分を変更する方法として、次の
大きな二つの特徴を持つ方法を提案した。一つは、サービスプログラムが、入替
えの契機を意識しなくてよい点である。もう一つは、入替え対象のプログラム部
分が、さらに入替え対象でない別プログラム部分を呼び出している場合にも、プ
ログラムの入替えを可能にしている点である。
【代表的な発表論文】
- 谷口秀夫, 伊藤健一, 牛島和夫:
“プロセス走行時におけるプログラムの部分入れ替え法,”
信学論D-I, 第J78-D-I巻, 第5号, pp.492-499 (1995).
- H. Taniguchi, K. Itoh and K. Ushijima,
A mechanism for Exchanging Program Segments While a Program is Running,
SYSTEM and COMPUTERS in JAPAN (SCRIPTA TECHNICA, INC.), Vol.27, No.13, pp.1-10 (1996).
- 谷口秀夫, 後藤真孝:
“走行中のプロセス間で共有されたプログラムの部分入替え法,”
信学論D-I, 第J80-D-I巻, 第6号, pp.495-504 (1997).
- 谷口秀夫, 後藤真孝:
“実行中プログラムの部分入替え法における入替え時間の評価,”
信学論D-I, 第J82-D-I巻, 第8号, pp.998-1007 (1999).
- H. Taniguchi and M. Goto,
Evaluation of Exchanging Time for Mechanism of Exchanging Parts of Programs during Execution,
SYSTEM and COMPUTERS in JAPAN (SCRIPTA TECHNICA, INC.), Vol.32, No.8, pp.53-62 (2001).
- 中島雷太, 谷口秀夫:
“実行中プログラム部分入替え法における入替え時間の短縮,”
情処学論, Vol.41, No.6, pp.1734-1744 (2000).
- 山本 淳, 谷口秀夫:
“実行中プログラムの部分入替え法における入替え条件の緩和,”
信学論D-I, 第J85-D-I巻, 第8号, pp.713-724 (2002).
- 山本淳, 谷口秀夫:
“動的リンク機能を利用した実行中プログラムの部分入替えにおけるプログラム状態把握法,”
信学論D-I, 第J88-D-I巻, 第4号, pp.800-812 (2005).